真っ赤なあいつがやってきた

げ!

こ、これは何ですか?


それは突然襲ってきた。

恐怖と混乱・・・
まさに・・・
「なんじゃーこりゃ」である。

ある晴れた日、出勤した私はちょっと用足しにトイレに入った。

医局から病棟までの間にあるそこは、昔ながらの電球照明であり景色は黄昏色だ。
気持ちよく用をたす私、しかしなんとなく違和感がある、むむ、灯りのためか尿がコーラのような色に見えるぞ。

昨日飲みすぎたかなあ〜などと非医学的なことを思い浮かべたが大して気にしなかった。
同日9時30分、さて、手術前に念のためもう一度用を足しておこう、術中にしたくなったら困るからね。
今度は明るいトイレである。
しばし後、そこには洋式トイレの湖面に広がるワインレッドの液体が・・・
間違いなく今私が出した液体である。
世の中には見ないほうが良いこと、見たくないことはたくさんある、少年にとっては大人の汚さ、大人にとっては彼女のスッピン等々・・・て、そんなこと考えとる場合か?

まじかよ、
血尿でしょこれ。
い、いや、直に治まるさ、大丈夫、うん、昼にはよくなるなどと気休めを考えつつ思い当たるふしをたぐってみた。
精神的プレッシャーで血尿見るほどヤワじゃない。
夕飯にホウレン草とベーコンのバター炒めをたくさん食ったが、着色でもされていたのか?
まさか。
じゃあ結石?
でも今は大して痛くない(左腰部はちょっと痛い、しかもそんなことはよくある)。
そういえば・・・

昨日帰ろうとして車に乗ったとたん左下腹部に激痛があった!
30分くらい脂汗かいていたら痛く無くなったのでビール飲んで寝たが、あれが結石の痛みだったのだろうか?
結石って遅れて血尿出ることあるのだろうか。
まさか膀胱癌か?
タバコは吸わないのだがなあ。
まあでもきっと結石でしょ、うん。

お昼。

真っ赤だなー、真っ赤だなー、トイレのお水が真っ赤だなー、

ぜんぜんよくなってない。
なんか変な汗が出てきた。
午後の手術中、おしっこがしたくなる、膀胱炎かワシは。
でもしょうがないから一段落ついたところで手を下ろしてトイレに行った。
真っ赤である、さっきよりも赤い。なんか気分も悪くなってきた、咽も痛いし、咳きも出る。周囲も顔色が悪いという。段々心配になってきた。
しょうがないから病院にいくか、ってここが病院だけどね。
まずは尿検査してみる、あたりまえだが尿潜血3+、蛋白2+。被爆がいやだけどCTも撮ることにした。

ウーム、あんまりはっきりした結石はないな、おや脂肪肝だ、油物を控えましょう。
ア!膀胱手前の尿管に小さな陰影があるぞ、これかあ、で一安心。

というわけで、次の日にはケロリと血尿は止まりました。
ちなみに咽が痛くなってきて週末には完全に風邪でした。
そりゃ顔色も悪いわな。
イヤーしかし、よかったよかった、膀胱鏡入れられるかもしれないと考えると気分が悪かったけど助かったぜ。
人間、見慣れないものを見ると焦るもんだねえ本当に。二度と見たくないね。