こんにちは!

消化器内科の小島です。


2008年5月18〜21日まで、米国カリフォルニア州サンディエゴで開催された2008DDW(米国消化器病週間)に参加して来ました。


      


ヨーロッパのUEGW(欧州消化器病週間)と比較すると、こちらのDDWの方がやや規模が大きい感じです。参加者はアメリカ、日本、韓国からが中心で、欧州各国からは少ない印象でした。



今回はだれもが驚くような大きなトピックスはなかったのですが、消化器領域でノーベル医学賞を受賞した、ヘリコバクターピロリの研究は一段落し、注目すべき話題としては、小腸カプセル内視鏡、NBI以外の新しい光を用いた内視鏡診断、IBD潰瘍性大腸炎)での分子標的薬の効果、自己免疫性膵炎の世界的集積、など少し前から話題になっているそれぞれの分野が一層進んだなという感じです。


僕は内科医なのでピンとはきませんでしたが、NOTES(経胃的内視鏡手術)は世界的にかなり広まってきているようで、トラブルシューティングのビデオセッションまで催されていて、外科医達の迫力に圧倒されました。



僕の分野の胃ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)に関していえば、ここ数年間でだいぶ様変わりしました。今回、発表の多くは韓国からのもので、日本からの報告は僕も含めて数題だったように思います。韓国の発表はほぼ3〜4年前の日本の成績と同じくらいのものでしたが、これは、近いうちにほぼ日本と同様になるでしょう。日本は、胃の分野での仕事はほぼ終わった感じで、さらに細かい技術が必要とされる食道腺癌や大腸への取り組みの報告がメインでした。



そうした中でも驚いたのは、MGH(マサチューセッチュ総合病院)の報告で、なんと、15cmほどもある食道粘膜を内視鏡下でほとんど出血もせずに全周性に採ってきたビデオを出していたことです(興味のある方は別途聞いてくださいね)。これは実は、まだ豚での動物実験で人間にはやっていないとのことでしたが、今年中には臨床応用されそうでした。
内視鏡技術は日本のお家芸でそう簡単に欧米には負けないだろうと、たかをくくっていたのですが、この厳しい競争社会の中ではそうでもないということに気づかされた発表でした。つねに進取と創造の精神を持っていないと、あっという間に追い抜かれていく現実を目の当たりにしました。

診断学の体得には,病理像との詳細な検討や,豊富な臨床経験が必要なのでこの分野ではまだまだ日本の独壇場でした。ただ、大腸のピット診断以降、NBI診断にしても体系的に完成された診断学はないため、あまり光は当たっていませんでした。臨床的には極めて重要な分野であるため,ASGE(アメリ内視鏡学会)ももっと力をいれても良いかも知れないと思いました。

僕の発表自体は最終日のポスターセッションでしたが、思ったほど反応はなくちょっとがっかりでしたが上にも述べたとおり、胃のESDはトピックスとしては既に目新しいものではなく、常に新しいものに取り組んでいかなければならないと反省させられました。仙台の研修時代の同級生も、国立がんセンター時代の先輩も、口演で報告していて、これはもうひとがんばり必要だぞと、痛感しました。



       ポスター会場   

さて、会場となったサンディエゴはどんな所かというと、アメリカ太平洋艦隊の母港であるため、まさに軍港の街でした。90年の湾岸戦争当時に活躍(?)した、空母ミッドウェーがすでに現役を引退し、内部を解放した博物館となっていました。ミッドウェーをはじめとした空母から飛び立った戦闘機が、バグダットを空爆した「砂漠の嵐作戦」を覚えている方も多いと思いますが、当時医学生だった僕は、先輩に誘われて、仲間と一緒に反戦デモに初めて参加したのでよく覚えています。
その作戦室は空母の中にあったのですが、そこまで公開されており感慨深いものがありました。


         



最近は2年に1度ほどの頻度で海外の学会に参加させてもらっていますが、やはり海外の学会は地方都市で医療をやる者にとっても刺激的で、リフレッシュの機会にもなります。送り出してくれる病院と仲間の先生方に感謝をすると共に、改めて、前向きに進んでいきたいと決意を新たにいたしました。