ヒポクラテス宣言

年末の大掃除を前に、資料の整理をしていたら
かわったものを見つけました。

さだまさしの『関白宣言』の替え歌で
ヒポクラテス宣言』というものです。
調べてみたところ
作られたのは89年頃。ある医学生が歌詞を考えたんだそうです。
当時、医学生看護学生たちが、取り組んでいた自主ゼミで唄われたようです。

1、
僕らが「先生」と呼ばれる前に
知っておきたい ことがある
かなり厳しい 話もあるが
医療の本音を 聞いてくれ


 患者より先に寝てはいけない
 患者よりあとに起きてもいけない
 カルテや処方箋は いつもきれいに書け
 読める程度で かまわないから


忘れてくれるな 心電図も読めない医者に
患者を護れる はずなどないことを
内科には 内科にしか
できないこともあるから
黙って外科に まかせておけ


2、

年増のナースと 目上の医者と
どちらも同じだ 大切にしろ
病棟の婦長 賢くこなせ
たやすいはずだ おだてればいい


 部長のかげぐち 言うな 聞くな
 それからつまらぬ 事件は起こすな
 僕は看護婦には手を出さない
 たぶん出さないと思う
 出さないんじゃないかな
 ま、ちょっと出しちゃおうかな


医療はみんなで創りあげるもので
医者だけが苦労して つくろうものではないはず
僕らは医療に 人生を捧げるのだから
僕らの使命は 人の命を護ること


3、

時が流れて 死が近づいたら
延命ばかり してはいけない
たとえわずか 一瞬でもいい
価値あるときを 与えてあげたい


 家族に囲まれ 時は流れる
 僕らはそれを 少し離れてみる
 「医学の力は 万能じゃない」と
 涙を浮かべて 僕はつぶやく


忘れてくれるな 僕らが対決するものは
教科書や論文に書いてある 病気ではないはず
忘れてくれるな 僕らが対決するものは
喜びや悲しみ 背負った 一人の人間

その時代を反映しておりますが、
なによりも期待と不安に胸を膨らませながら、
真摯に医療と患者と、そして仲間と向き合おうとする医学生たちの姿勢が伝わってきます。

青臭く、医療や社会を語り合った時代と仲間がいたからこそ、
俺は今でもこの過酷な現場に立っていることができるんだと思う。

ある医師はそう語っていたのを思い出しました。

この歌を唄った医学生たちもまたそうした「思い」を抱きながら、研修医となり、
今も医療の最前線に立ち続けているのでしょうか。

(学生担当・窪田)