院長の趣味と労力

Intra-network Server更新の記録
諏訪共立病院 院長 岩間 智

(はじめに)
当院では7年ほど前、DellのentryサーバにRed Hat Linux Ver. 8.0 + Apache + MySQL + Perlをインストールし、Webアプリケーションシステム:“mini.-mini. e-Chart”を構築。主に「Problem listと画像診断所見・再検月数管理」、「血液検査データベース」、「診断書・診療情報提供書・入院総括発行」、「内視鏡画像アーカイブ」のサーバとして運用してきました。

(サーバ故障)
ところが、2008年12月中旬のある朝、外来でmini.-mini. e-Chartを開こうとすると、Internet Explorer:“ページを表示できません”のエラーが!!!…。他のDr.からも「紹介状が書けない!!」と苦情。あわてて、Dellのサーバを観てみると、あれー(*_*)電源が落ちているではありませんか!サーバがつながっている無停電電源装置のインジケータには異常なし。サーバの電源スイッチを押してもシステムが立ち上がりません。サーバの電源が故障したか?!…昼頃、外来が終わってから、比較的最近買ってもらった院長Desktop Windows XP Professionalの電源と交換しました。交換後は何事もなかったようにサーバが動き出しました(^_^)v。このサーバのトラブルはこれが初めてであり、7年間もの間良くもったものだと感心しました。

電源交換で当面はいいかな?と思いましたが、最近「DICOM serverのデータバックアップを一般のPCでしているため、時に画像保存ができなくなる」トラブルが起きていました。そこで、これを機に「Dellサーバを更新して、DICOM back up serverとしても運用しよう」ということになりました。

(当院DICOM: Digital Imaging and COmmunication in Medicine Serverは内製)
DICOM serverはCT更新後の2008年2月、hp(ヒューレット・パッカード) の、はやりentry サーバであるProLiant ML115(OS: Windows Small Business server 2003)にBuffalo 高速外付 HDD(容量2TB)をe-SATA接続し、フリーのDICOMサーバソフトであるCONQUEST DICOM Serverをインストールしていました。


(最小限のコストでDICOMサーバを作ろう)
DICOMサーバを作るには一台目同様Windows + CONQUEST DICOM serverなら簡単だろうけれど、Windows server 2003だと84,000円、サーバOSを諦めてWindows XP professionalでもDSP版で1万円ちょっとかかってしまいます。そこで、OSはLinux∴無料でいこうと決めました。また、ハードもCPU: Opteron1214(中位の価格)、メモリ: 2GB、HDDは一台だけ最小容量のものを純正[ここまでは前記DICOMサーバと同一]とし、1TB HDD 3台追加(DICOMデータ保存用に2台、一般のファイルサーバ用に1台)を別にネットで発注することにしました。



ただし、HDDは価格が倍(それでもhpの純正品より激安)ですが、故障率が低いことで定評のあるSeagateBarracuda ES.2 SATAとしました。1台目のhpサーバはBuffaloの外付け2TB HDDがやや高価で20万円位しましたが、今度は1TB HDD×3台=5万円弱で済みました。Hpサーバ本体の価格低下もあり、ハードに限っても20万円安く、OSを含めれば30万円ほど安上がりでした。[i.e. 1台目=約40万円、2台目=約10万円]


新サーバでのメイン・アプリケーションはDICOM serverですが、Linuxで動作するフリーのDICOM server softwareとしてはdcm4cheeが評判良く、自宅のMacBookPentium?マシンのWindows2000Linux(CenOS)にsetupした経験がありましたので、CentOS + MySQL(やはり無料のデータベース) + dcm4cheeのインストールを試みました。


1月末にハードがそろいました。


(発注した開封前の本体・付属品)



(HDD増設中のhpサーバ内部)


ハードの組み立てはすぐにできました

(完成したサーバ)



(アプリケーション・ソフトウェアのセットアップに難渋)
ところが、、、

CentOS(64bit版) + MySQL(64bit版) + dcm4chee
→dcm4chee起動時にerror頻発!!

CentOS(32bit版) + MySQL(32bit版) + dcm4chee
→dcm4chee起動、error発生なし(^o^)
→CT更新時(2007年8月末)から同年末までのDICOMファイルを転送→ok:かなり高速(^o^)
MySQLを日本語が扱えるように設定変更
→DICOMファイルのHDDへの書き込みができない!!!!!(T_T)
MySQL設定ファイルを戻してもダメ(T_T)

dcm4cheeがプリインストールされているknoppix live CD
→dcm4cheeの管理画面は表示されるものの、初期設定が保存されない

Ubuntu Server版(amd64bit版) (+ MySQL64bit版 + dcm4chee)
Ubuntu Serverインストールはすぐできたが、コマンドライン・インターフェースしかないのでその後の作業断念

Ubuntu Desktop版(amd64bit版) + MySQL64bit版 + dcm4chee
Ubuntu Desktop版(amd32bit版) + MySQL32bit版 + dcm4chee
Ubuntuインストール簡単。ユーザインタフェースもパッと見使いやすそうだが、DICOMデータ保存までいかず(どういう症状だったか忘れた)

CentOS(32bit版) + PostgreSQL(32bit版) + dcm4chee
→dcm4chee起動、error発生なし(^o^)
→DICOMファイルのHDDへの書き込みができない!!!!!(T_T)

(一時的にうまくいった設定を再現してみる)
CentOS(32bit版) + MySQL(32bit版) + dcm4chee
MySQLの設定変更せず
→dcm4chee起動、error発生なし(^o^)
→DICOMファイルのHDDへの書き込みができない やっぱりダメか(T_T)
→dcm4cheeのバージョンを換えてもだめ

(まさに泥沼にはまってしまった)
(CPUがAMD Opteron Dural Coreのため、Linuxと相性が悪い???)
(DICOMデータを書き込もうとしている、ファイルシステムがソフトウェアRAID0だから???)
・・・・・・・

Xenでサーバを仮想化しWindowsXP をゲストOSとして走らせ、そこにCONQUEST dicom serverを入れる
→(Win.XPのインストールにてこずる)→CONQUESTが動くには動いたが、WinXPに4GBしか割り当てられない。しかも、CentOS内にデータを確保することができず。主メモリ2GBを2つのOSで共有するとなると1GBずつ。もう2GB造設するか?…やはり、一つのハードで2つのOSは無駄なので止め

(結局)
dcm4cheeを断念し、CONQUEST dicom serverをCentOSで使う
〜CONQUESTのマニュアルには“The conquest server code has been optimized on windows. It runs almost a factor of 2 slower on linux with the same hardware.”(conquest serverのコードはWindowsに最適化されており、同一のハードの場合、Linuxでは速度が約1/2となる)とあるが、仕方がない。
→(Conquest独自仕様の)NKI圧縮は可能だが、jpeg lossless圧縮しようとするとerror! NKI圧縮(lossless圧縮で高速)とする。
→内科外来iMac(DICOMデータをバックアップしている)からデータを転送してみる
→「CT画像一ヶ月分の転送≒1時間弱」で転送できていて、errorなし(^_^)v
CentOS(32bit版) + MySQL(32bit版) + dcm4cheeで一時的に成功した時と同じ転送速度(100Base/TX環境が律速?)。∴これでいく

(安定してサーバが動くまでに3週間近くかかってしまいました)


(というわけで)
慢患管理を司っていたサーバの電源故障を機に、最安のハード+フリーソフトでDICOMバックアップサーバを兼ねた慢患Webアプリ(近日中にset up)サーバをset upしました。ふつう“病院”では当院規模で数千万円(中規模病院なら数億)のお金をかけて専門業者にPACSを構築してもらうものですが、当院はそんな予算はありません。したがって“院長の趣味と労力”でPACSを構築・運用しているわけです。

因みに、現在の日本では、「医療に使用する機器を販売する」ためには薬事法の承認が必要ですが、一般のコンピュータ機器・ソフトを診療に使うこと自体は違法ではありません。CT画像なら、一般のPCモニタで充分に読影できると思われます。ただし、単純XPを通常の液晶モニタに表示しても微妙なコントラストが表現できませんので、当院では単純XPはフィルム(CR)で読影、そのデジタルデータはバックアップ用にサーバ保管しています。

先日、午前診の途中に突然mini.-mini. e-Chartが開けなくなりました。ところが、サーバはちゃんと動いており、再起動してみましたが症状に変化ありません。「もしかして、サーバが新たにLANに加わったことで既存のDNSサーバに過負荷をかけてしまったのでは…」と冷や汗をかきました。あれこれ鑑別診断を試みているうちに、Ping(ネットワークの接続性を確認するコマンド)してみると、“Request timed out.”あれっ! LANがつながってない!!→よく観ると、医局のLAN switchの電源ケーブルが抜けかかっていました。

…毎日がthrillingで実に楽しいです(^o^)